
私たちは、出来事そのものではなく、それをどう受け止めるかで心の状態が決まります。
「止観(しかん)」
私たちの心は、常に動き続けています。楽しいことがあれば浮かれ、悲しいことがあれば沈み、何もないのに不安を感じたり、逆に根拠もなく幸せを感じたりすることもあります。これは、外の出来事とは関係なく、心そのものが動き回っている からです。
仏教には「止観(しかん)」という教えがあります。「止」は心の動きを鎮めること、「観」は物事の本質を見極めること。例えば、水面が波立っていると、その下にあるものは見えません。しかし、水が静かになれば、底に沈んでいるものがはっきりと見えてきます。心も同じで、ざわざわと騒いでいる時には、大切なことが見えなくなり、誤った判断をしてしまうことがあります。
心の波を静めるために大切なのは、「今ここ」に意識を向けること です。過去の後悔や未来の不安にとらわれず、今この瞬間に意識を向けることで、心は少しずつ穏やかになります。例えば、深呼吸をして、自分の息の流れを感じてみる。ただそれだけで、心が少し落ち着くのを感じるでしょう。
また、心の動きに気づくことも大切です。「ああ、今、自分は不安になっているな」「なんだか心がざわざわしているな」と、その動きを客観的に見つめるだけで、不思議と心は落ち着いてきます。これは「唯識(ゆいしき)」の教えにも通じます。私たちは、出来事そのものではなく、それをどう受け止めるかで心の状態が決まります。同じ出来事でも、人によって感じ方が違うのはそのためです。
心が動き続けるのは自然なことですが、その波に振り回されるのではなく、静かに見つめることで、本当の幸せや大切なものが見えてくるのです。合掌
「この記事は、浄土真宗本願寺派 龍眞院『お坊さん@出張®』がお届けしました。」
この法話は遷仏法要のご縁でもお伝えすることがあります。ご先祖様をお守りいただく仏壇を移動する時は、仏様を正しくお迎え直す遷仏法要があります。