
多くの人が本気で“今を生きる”ということを忘れておられます。
夢の世界で生きる私たち
私たちが生きる現代は、ほんの数十年前の人から見れば「夢の世界」です。
文字だけだったパソコンは、写真も映像も音も自在に扱えるようになり、世界中の情報が一瞬で手のひらに届きます。移動も通信も、かつては想像すらできなかったほど進化し、日常そのものが奇跡の積み重ねと言えるでしょう。
けれども不思議なことに、その奇跡を「奇跡」と感じられる人は少なくなりました。
それは、多くの人が本気で“今を生きる”ということを忘れてしまったからです。
私たちは気づかぬ間に、他人との比較で自分の価値を決める「相対の幸福」に縛られています。
誰かより幸せか、誰かより不幸か、誰かより成功しているか……そんな基準に心を奪われると、どれほど恵まれた環境にいても満たされることはありません。
仏教は、本来この囚われから私たちを解き放つ教えです。
無常の世界に生きる私たちにとって、永遠に続くものは何ひとつありません。
だからこそ、一瞬一瞬がかけがえのない宝であると気づく智慧・・・これを仏教では慧眼(えげん)といいます。
外側の世界に振り回されるのではなく、いま目の前にある“事実の尊さ”をそのまま受けとめる眼です。
たとえば、朝起きて息をしていること。
誰かと挨拶を交わせること。
食事ができること。
家族がいること。
どれを取っても当たり前ではなく、数えれば数えるほど、私たちは無数のご縁に支えられて生きています。
心を静め、阿弥陀さまの願いの中で今を見つめると、日常の一つひとつが光を放ちはじめます。
「もっと上を」「もっと良くを」と求め続ける心が少し緩んだとき、そこに本当の幸福が立ちあらわれるのです。
夢の世界を“夢のまま”に終わらせるのか。
それとも、いまこの瞬間に奇跡を感じながら生きるのか。
選ぶのはいつも私たち自身です。
今日一日が、尊いご縁とともに歩む時間となりますように。
合掌🙏
「この記事は、浄土真宗本願寺派 龍眞院『お坊さん@出張®』がお届けしました。」
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